酸ー塩基平衡と人工呼吸器管理|血ガスから人工呼吸器管理のコツを知る

tama
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こんにちは、tamaです。今回は血ガスです。苦手分野トップ3に入る血ガスだよね。それでは、今回も頑張りましょう。Let’s Start !

この記事でわかること

・酸ー塩基平衡とは何かわかる
・代償とは何かわかる
・ガス交換を血ガスで見る方法がわかる
・血ガスから人工呼吸器管理がわかる

目次

酸ー塩基平衡とは

酸ー塩基平衡とは酸とアルカリのバランスということです。

酸ー塩基平衡は

CO2 + H2O ⇄ H+ + HCO3-

CO2は二酸化炭素、H2Oは水、H+は水素イオン、HCO3-は重炭酸イオン

CO2は酸、HCO3-はアルカリです。

CO2を体から放出するのが肺の役割で、HCO3-を体内に取り込むのが腎臓の役割です。

CO2とHCO3-のバランスがpHになります。

酸性に傾くとpHは低下し、アルカリ性に傾くとpHは上昇します。

正常値 pH7.4±0.05

肺と腎臓の働き

pHは腎臓と肺によって調節されています。

腎臓

腎臓は尿を酸性化することでpHを調節しています。

腎臓におけるpH調節は近位尿細管と集合管で行われています。

近位尿細管では、糸球体で濾過されたHCO3-の再吸収
集合管では、H+の排泄とそれに伴うHCO3-の新生

どちらの反応も、炭酸脱水酵素の働きによりH+を生成し、尿中に分泌します。

結果として、尿のpHは下がり、血液のpHが上がります。

腎不全になると、尿の酸性化が障害され、代謝性アシドーシスを生じます。

代謝性アシドーシスは有機酸が蓄積するタイプとH+が負荷されたタイプがあり、前者が慢性腎不全、後者が下痢、尿細管アシドーシスに分類されます。

酸ー塩基平衡の異常

正常ではPaCO2:40mmHg 、HCO3-:24mEq/Lでちょうど釣り合っており、この時pH7.4です。

pHの正常値 7.40±0.05

酸性ではpH<7.4、アルカリ性ではpH<7.4となります。

血液のpHを下げる方向に働く病態:アシドーシス
血液のpHを上げる方向に働く病態:アルカローシス
血液のpHが7.35以下になっている状態:アシデミア
血液のpHが7.45以上になっている状態:アルカレミア

PaCO2が40mmHgより増えるか、HCO3-が24mEq/Lより減るとpHは酸性に傾きます。

PaCO2が40mmHgより増える状態呼吸性アシドーシス
HCO3-が24mEq/Lより減る状態代謝性アシドーシス

反対に、

PaCO2が40mmHgより減るか、HCO3-が24mEq/Lより増えるとpHはアルカリ性に傾きます。

PaCO2が40mmHgより減る状態呼吸性アルカローシス
HCO3-が24mEq/Lより増える状態代謝性アルカローシス

正常値:PaCO2:40mmHg 、HCO3-:24mEq/L

代償とは

PaCO2かHCO3-のどちらかが増えると、代償の働きによりもう一方も増え、どちらかが減るともう一方も減ります。

代償では両者は同じ方向に変化します

また、pHが正常になるまで代償するわけではありません。

呼吸性の異常が起こったときに腎臓が代償するには数日かかりますが、代謝性の以上で肺が代償するのはすぐに行われます

[box class=”box29″ title=”代償のポイント”]
・PaCO2とHCO3-は同じ方向に働く
・pHは正常に近づくが、完全に正常にはならない
・腎による代償は遅く、肺による代償は早い[/box]

tama
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血ガスで大切なのは普段の状態と比べてどれくらいバランスが崩れているかを見極めることだよ。そこで、pHが重要になるよ。

慢性的にCO2が高いCOPDの患者さんでもHCO3-を上げて代償していれば、CO2が高くてもpHは正常値を維持しているよ。

そこに急性の悪化が加わると、PaCO2のさらなる上昇に腎で代償しきれないためにpHが低下し、呼吸性アシドーシスになるというのはよくあるよ。

代償ではPaCO2とHCO3-の両者は同じ方向に変化する

ガス交換

ガス交換は酸素化と換気に分けられます。

酸素化はSPO2でも見ることができますが、換気は血ガスが必要になります。

換気

換気がうまくいかずPaCO2が上昇する疾患の代表はCOPD急性増悪があります。

また、意識障害を伴う場合は呼吸回数の減少などにより、PaCO2の上昇をきたしている場合があります。

換気障害がある場合は、酸素投与だけでは改善しません。人工呼吸器管理が必要になる場合が多いです。

ガス交換

酸素化の障害が起こるのは、重症肺炎や心不全、ARDSや肺塞栓などです。

酸素化の障害に対しては、酸素投与で対応できるため、即座に人工呼吸器導入ということにはなりません。

換気障害の合併や呼吸仕事量の増大、重度の酸素化障害の場合に人工呼吸器管理が必要となります。

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代謝性アシドーシスと呼吸

代謝性の酸ー塩基平衡異常ではHCO3-が変化します。

HCO3-の変化だけではpHが大きく変化してしまうので、pHの変化を最小にするため代償性にPaCO2も変化します。

HCO3-が低下する代謝性アシドーシスではPaCO2も代償性に低下し、HCO3-が上昇する代謝性アルカローシスはPaCO2も上昇します。

PaCO2を下げるには換気量を増やします。そのため、代謝性アシドーシスでは呼吸回数を上昇させて、換気量を増やします。

そのため、この場合は頻呼吸があっても呼吸器疾患ではありません。

一方、代謝性アルカローシスでは換気量を減少させて、PaCO2を上昇させます。

このような呼吸の調節は延髄の呼吸中枢が行います。

代謝性アシドーシスを見たらアニオンギャップを計算する

アニオンギャップとは、血漿中の陽イオン(Na+)と陰イオン(Cl-、HCO3-)の差のことです。

アニオンギャップの正常値 12±2mEq/L

アニオンギャップ(AG)=Na+ー(Cl-+HCO3-)

AG増加型代謝性アシドーシス

ケトン体や乳酸の有機酸が蓄積するタイプのアシドーシスでは、これらの酸がHCO3-と中和するためHCO3-が減少し、アニオンギャップは増加します。

高Cl性代謝性アシドーシス

アニオンギャップが増加しない代謝性アシドーシスは、その分Cl-が増加しています。

補正HCO3-を計算する

アニオンギャップが増加しているとき(AG増加型代謝性アシドーシス)は、補正HCO3- を計算します。

補正HCO3-=(AGー12)+HCO3-

他の代謝性異常の有無をチェックするために行います。

補正HCO3-が24mEq/L以下の場合は、AG正常型代謝性アシドーシスの合併が考えられます。

補正HCO3-が24mEq/L以上の場合は、代謝性アルカローシスの合併が考えられます。

[box class=”box16″]血ガスの見方
1、pHをチェック
2、代償性変化をチェック
3、アニオンギャップを計算
4、補正HCO3-を計算
5、総合的に全身を評価[/box]

代謝性アシドーシスでの人工呼吸器管理

代謝性アシドーシスはアニオン・ギャップが上昇するタイプと上昇しないタイプの2種類に分けられます。

[box class=”box25″]アニオン・ギャップとは
アニオンとは陰イオンのことで、アニオン・ギャップは血清中の主な陽イオンであるナトリウムから、陰イオンの塩素と重炭酸を引いた値。[/box]

アニオン・ギャップが上昇するタイプの代謝性アシドーシスの原因

乳酸アシドーシス(ショックによる)、腎不全、ケトアシドーシス、中毒(アスピリン、エチレングリコール、メタノールなど)

重炭酸イオンが減少する分、測定されない陰異音が増えるので、アニオン・ギャプが上昇する。

アニオン・ギャップが上昇しないタイプの代謝性アシドーシス

下痢、尿細管性アシドーシス(RTA)、ショックの治療で生食を大量投与した時

重炭酸イオンが減少する分、塩素イオンが増えるので、アニオン・ギャップは変化しない。

[box class=”box29″ title=”人工呼吸器管理のコツ”]代謝性アシドーシスでは原因となる疾患の治療するが、すぐにHCO3-が正常化するわけではないので、それまで呼吸が代償する。そのため、人工呼吸器の設定ではPaCO2を低くしてpHを保てるように換気量を多くする。[/box]

代謝性アルカローシスと人工呼吸器管理

代謝性アルカローシスの原因には、嘔吐、NGチューブ吸引、利尿薬、高二酸化炭素血症の急な補正があります。

慢性的にPaCO2が上昇している患者酸ではHCO3-が上昇しているので、このような患者さんに人工呼吸器をつけてPaCO2だけを急に補正してしまうと、代償で上昇しているHCO3-が下がるのに時間がかかるために代謝性アルカローシスになります。

tama
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慢性呼吸性アシドーシスのある患者さんが急性に悪化した場合、急激に普段よりもPaCO2を下げるのは避けます

代謝性あるカローシスは無症状が多いですが、重度の場合は不穏や痙攣を起こします。

代謝性アルカローシスがあると呼吸中枢が抑制されて、代償性に換気量が減ります。

[box class=”box29″ title=”人工呼吸器管理のコツ”]pHが7.5を超えるような代謝性アルカローシスでは、呼吸性アシドーシスがなければアセタゾラミド(ダイアモックス)を投与する。アセタゾラミドは近位尿細管でのHCO3-再吸収を阻害することで、HCO3-を尿中に排泄する。[/box]

慢性呼吸性アシドーシスがある患者さんが人工呼吸器離脱に向けて設定を下げていくと、PaCO2が普段くらいの値(正常よりも高め)になってきます。

すると、代償のためにHCO3-も必要になります。しかし、ここでアセタゾラミドを使用しHCO3-を下げてしまうと、呼吸性アシドーシスが代償されず、pHが低下してしまいます。

普段のPaCO2が高い場合は、HCO3-も治療せずに高いままにしておきます。

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COPDなどで慢性呼吸性アシドーシスがある患者さんでは、HCO3-を無理に正常化しないよ。

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この記事を書いた人

たまです。30代後半、現在、第1子妊娠中です。
看護師歴15年になります。
エアクロ歴6年、育児や知育について勉強中。
趣味は温泉、家庭菜園、投資。

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